陽だまり
認知症の話が連続していますが私が診察に行っている老人ホームでのことです。
重度に認知症が進んでしまって
もはや寝返りを打つこともなく
発語や表情もなく
意思疎通も不可能な入所者のとある女性が
穏やかな陽だまりのベッドで横たわっていました。
私たちは口腔ケアのために部屋に入り
お声がけをして
お口を開けさせていただいたところ、
驚きました。
普段は乾燥気味の口腔内なのに
その日は大量の粘度の高い喀痰が
溜まっていたのです。
褥瘡防止のための側臥位であったので
窒息しなくて済んだのだと思いますが
急いで吸引器で喀痰をすべて除去し
口内を拭き上げて差し上げました。
部屋の壁にはその方の元気なころの写真や
ご家族とにこやかに過ごす写真が貼られていて
なんとなくですが、写真の中の穏やかなお顔に
戻ったような気がしました。
2021年08月15日 20:02