審美と機能
「審美」と「機能」は相反することがあります。
人には上下の顎があり
動くのは下あごが動くわけですが
その際に上の前歯が「ガイド」します。
ガイドが適正であると
歯列全体が長持ちします。
逆にガイドに問題があると
負担過多の歯がでてきて
問題が起きたりします。
歯科治療の時にはこの
適正なガイド、を与えたいわけですが
適正なガイドを与えると
今度は見た目が悪くなることがあります。
機能的なものは美しいはず、
と思いたいところですが
機能的にすると
見た目が悪くなることがある。
なぜこんなことが起こるのでしょう
多くの場合
きれいにしようとすること自体に無理があったりします。
加齢とともに
人の歯は変わってゆきます。
すり減ったり、欠けたり、
ずれたり、揺れてきたり
変わるのは歯だけではなく
顎関節も
顔や体の骨の形も
筋や靱帯も
体全体のバランスも変わってゆきます
昔の人は歳とともに
歯を失いましたが
昔だったら歯を失っていたはずの人が
今は歯科の進歩によって歯が残っている
体全体が変化しているのに
歯だけきれいにしようとすると
そこにひずみが生じます
人為的にひずみを与えるわけですから
与えすぎると
体はそのひずみを破壊しようとします。
与え方が適度であれば
体はそれに適応しようとするか
機能に沿う形に
調和させようとします。
最近歯科の世界ではSNSなどで
前歯でも奥歯でも
抜群にきれいな審美治療をして
歯を大写しにして
masterpieceなどと言って
自慢したがる傾向があり
若い先生や
一部の患者さんが
それが「いい治療」だと
勘違いしてしまっていることが
よくありますが
時には
適度ないびつさをもって
調和を目指すことも
最善の選択である場合もあると
考えています。
以前ブログで
世界的に有名な高齢の日本人
歯科技工士のことを書きました。
世界中の歯科医や技工士が
勉強しに来ていましたが
少し前に亡くなってしましました
その方は自分のすべての歯に
自分が作ったクラウンを入れていて
自分の咬合理論の正しさを
自分の身をもって証明している
そんなすごい人でした。
その方の話が思い出されます
歯科治療はミクロン単位とはいっても
人がやることは当然完璧ではない
しかし十分に考慮した形を与えるならば
人の身体のほうが
「そぐってくる」
つまり身体側から
受け入れ、包容し
そして調和するのだと
2022年02月22日 10:29