「サービス」
歯の治療は口を開いている時間も長いし
水も出るし
大変だと思います。
虫歯をしっかりきれいにしたり
虫歯の原因となる「隙間」を作らず
しっかり詰める治療をしなければ
歯は長持ちしないわけですが
そういう治療をしようとすると
治療を受ける患者様も
かなりの労力だと思います。
たとえそうであっても、
できるだけ痛くなく
怖くなく、
そしてなにより、歯科医院を出るときに
いやな気持、不快な気持になって出ていくことがない
ようにしたいと思っています。
大変なハードルを
不快な思いをしないように乗り越えてもらう
しかしその治療結果は
患者様の人生の質、ときに寿命にもかかわってくる
という
難しさや、責任の重大さ
ある意味
歯科は究極のサービス業なのではないか
と勝手に思っています。
北欧の著名な高齢者施設専門の歯科医の
話をきいたことがあります
前歯と奥歯が両方壊れている人がいたとします。
どちらから治すか
まず前歯から治すそうです。
その人の「尊厳」の方が大事だからです。
海外と日本では認識の違いがあるかもしれませんが
「尊厳」が重要であること、
これは変わらないと思います。
私も老人ホームに定期的に診療に行っていますが
こんな経験をしました。
とある男性の認知症患者様
その方は以前はある分野で重鎮で
先生と呼ばれていた人らしい
でも今は認知症で
ボーっとしている感じで
私もまだあまり経験がないころで
「○○さんこんにちはー。」
「はーい、おくちをあいてくださーい」と言うと
「おくち、だと!?」と言って
怒り出しました。
痴呆があるからといって
子供のような扱い
上下関係を押し付ける歯科医療者の態度に
むかついたのだと思います。
当然です
認知症は本当に程度がさまざまなので
その状況によっても対応が違うのですが
このような方の場合には
「○○さんこんにちは」
「今日は歯の診察に参りました」
○○さん→「うむ」
「では拝見いたします」
「はい、次左側を拝見いたします。失礼します」
「お疲れさまでした、今日は終わりになります」
「では失礼いたします」
リスペクトです
一回の歯の診察よりも
尊厳や納得、関係性の方が
よほど重要なのだと考えます
昔は技術と知識があれば
何とかなると思っていました
確かにその二つは
もちろんとんでもなく重要ではありますが
臨床医には
もう一味(ひとあじ)必要であることに
開業して長年の経験の中で
知ることになりました。
このマンションには
現役を引退されて
ご夫婦で済んでらっしゃる方々が
多くいらっしゃいます。
歯や入れ歯の調子がおかしくなった時に
ご夫婦間や、いろいろな会の場で
「ちょっと入江さんとこ行ってくるわ」
という発言が出るらしい
私はそれを聞いて
すごくうれしくなりました。
行きたく無い歯医者
行ったら不快な思いをする歯医者
でないように、
健康になることを実感できる歯医者
であるように、
努力を続けたいと思います。
2024年07月04日 07:00