わからないこと
口腔内の細菌と全身の病気との関連は最近研究が進んできていて
従来から言われていた
誤嚥性肺炎、心内膜炎、糖尿病のほかにも
様々な病気と関連があることがわかってきています。
私の医院は
かなり状況の悪い歯であっても
手を尽くして、できる限り歯を抜かない
努力をする医院ではありますが、
そこには常に
葛藤があります。
状況の特に悪くなってしまった歯は
手を尽くして治療したとして
すっきり元通りになるのかと言えば
そうでもないことも多くて
ちゃんと腫れは引いて
しっかり形も回復しても
すっかり治ったかのようで
やはり健康な歯より弱いことが多いです。
わずかに炎症が残ったり
まれに腫れたりすることもあったりして
そうなったときに
最後までそういう歯を残していいのか、という
思いがあったりします。
悪い歯が全身に影響することを
私たち歯科医が現実に経験することは
実感として
あまりないというか
めったにないのですが
それでも
脳卒中の病変部位から
う蝕細菌が見つかることもわかっていて
良くない歯を口腔内に残していた患者さんが
ある日、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)になった、
なんてことがあると
「あれを抜いておくべきだったんじゃないのか?」と
頭を抱えることがあります。
私自身
そうやって大事な人を過去に失う経験をしているので
でも、関連なんてわかりません。
歯は残すべきだと思うし
患者さんも残したがるし
でも、体を悪くしたら本末転倒
どころの話ではありません。
その歯は何の自覚症状もない歯でした。
レントゲンでは明らかに問題があり
前医での治療は手を尽くされており、それでも治っていなくて
抜歯が必要な状態でしたが、
自覚症状のまったくない歯を
まさか、抜きましょう、とは言えませんでした。
今ならCTやマイクロがあるので
もっと違う対応ができたかもしれません。
脳動脈瘤のクリッピング手術をすべきか相談を受け
年間0.5%程度の破裂率に
クリッピングの合併症発症率が2-3%
医者の言う成功率98%は
まず失敗はないという意味ですので
クリッピングを勧めるべきでした。
そこでまず一つ目の判断ミスをして
そしてあの歯を残したことは
二つ目の判断ミスだったのではないのかと
今も思うことがあるのです。
人の身体は強い
問題のある歯を抱えて元気に生活している人は
いくらでもいます。
できるだけ歯は抜くべきではないですが
これは正直に言っていいものか、とも思うのですが、
誰もわからないことだと思うのです。
2024年11月21日 19:47