介護施設での話
週に一回、父の入居するホームに見舞いに行き、
いつも3階にある部屋で話すのですが
受付の方いわく、
今日は入り口まで下りてこられるそうです、
とのこと。
そういう気分なのではないか、
とのことでした。
もう90代で車いすで
耳も遠くなってしまっていて
いかにも見た目はお爺さんになって
しまっていますが
やってきた車椅子の父は
周りに聞こえない小さな声で一言、
「3階の職員でコロナが出たらしい」
とのこと。
私を3階にあげない
配慮だったようです。
相変わらず頭はシャープで
見た目がいかにも高齢者でも
そういう事があって
私は時々
広尾の老人介護施設で
診療などやっていて
コロナのパンデミックだったころ、
私はスクラブという半そで診療着の上に
不織布のガウンを着ていて
テレビのある広間には何人かの高齢者が
寝たりうなだれたりしながら座っていて
ほどんどの方が進行した認知症で
ある日、とある入居者さんの
口腔ケアの診察させていただいた時
後ろにうつろに座っていた
認知症が進行していて
もう会話もままならないと思っていた
ご高齢の女性が
私の背中をつちょんちょんとつついて
小さな声で
私の不織布ガウンについて
「あなたシワシワよ。
そういうのはつるしておくと伸びるから。
意外と皆さん気にしているのよ。」
とのこと。
びっくりして
思わず、「すいません、わかりました」と
当たり前のことではあるのですが、
老人ホームで
穏やかにただ座っているように見えるご老人たちが
(失礼な表現で申し訳ありません。)
いろんなことを感じたり
考えたりされていることを
改めて実感したのでした。
2025年10月14日 08:18