天然の歯とインプラント
私は大学歯学部を卒業したのち、とある医学部の附属病院で研修を受けました。
もう30年も前のことですが
研修医と先輩たちが医局で休んでいた時、
10年くらい上の口腔外科の先生が飛び込んできて
「出た、出た、とうとう出た」とのこと。
手には英語論文があり
「Dental Implant induced Squamous cell carcinomaだ」とのこと
(歯科インプラントが誘発した扁平上皮癌)
当時はインプラントに疑念を持っている歯科医が多く、
なぜこんなに上手くいくのか、
話がうますぎるのではないか
きっとそのうち大きなしっぺ返しが来るに違いない、
のように、
インプラントに対して思っている人が少なくなかった
その話を聞いて当時の私も、
「これはまずいのではないか」と思いましたが
その後その関連性は否定され、個人的な臨床実感としても、
正直、全く関係がないように思います。
初期の頃に感じていた、
インプラントに対する
話がうますぎる、
いつかしっぺ返しが来るのでは、といった思いは
全く当たらなかった
それどころか
患者さんのインプラントは生活の質を高め
栄養状態を改善し
健康寿命を伸ばしている、という実感の方が
はるかに強く感じます
あと当時私は
インプラントを入れた患者さんが歳をとって
歯を磨けなくなったらどうなるのか、
インプラントが炎症を起こしたりして
これは社会問題になるのではないか、
なんて思っていましたが
どうやらこれもあまり問題にならず
今は老人ホームに時々診察に行っていますが、
インプラントが問題を起こすどころか
インプラントに日々支えられている人も多い
ということで
初期の頃からも日々進歩し
今は非常に優れた治療法となったインプラントですが、
私としては
インプラントは神様が造った天然の歯ではありませんので
そういったものに対する慎重さは失ってはならないと
思っています。
神様が造った天然の歯をまず大事にして
その歯がいろいろ問題を起こして
やむを得なくなったら、
必要に応じて
最小限のインプラントを使用して
人生を全うしていただくのが
いいのではないかと
考えています。