~かけがえのない歯を大切にする治療、価値ある治療結果、そしてつらくない治療をめざしています~

HOMEブログページ ≫ 治療について ≫

日々雑感

「歯科の医療と費用」

前回の続きを書きます。

以前スウェーデンに研修に行ったときに
ちょうど留学していた日本人歯科医と3~4時間話す機会がありました。

もっぱら、医療制度の違いについてとか。

その先生が大物であることは
前評判で知っていましたが
歯科医としての能力だけでなく
極めて柔軟な思考力や
政治力や大局観まであって
私も「これは大した人だぞ」と思いました。

その先生が言ってました。
「日本の保険制度はうまくやっている。
あの細かくてうるさい日本人を
不満が噴出しないレベルで
なんとか満足させている。」

保険制度は全国一律、全世代一律の治療内容ですから
その内容で満足する人と満足できない人が出てきます。
その線引きが絶妙ということです。

その線を境に一方の人々は満足している。
もう一方の人々は満足していない。
予算は無尽蔵ではありませんから
満足できない人たちが騒ぎださない程度に
その一線を設定している、ということです。

では保険制度に満足していない人とは
どういう人たちでしょうか。
私の経験上、

やたらに虫歯が再発する人
かみ合わせの強さ(歯ぎしりなど)でやたらに歯が壊れる人
それらの理由により頻繁に歯医者通いしなければいけない人
見た目を重視する人

こういった方々の歯科治療には方法的にも材料学的にも
相当な配慮が必要です。
だめになったらやり直せばいい、という考え方もありますが、
治療するたびに歯は減ってゆきます。
一生涯のうちにいかに治療回数を少なくできるか、が
勝負です。

上にあげたような方々が
歯医者通いにかける時間的、
繰り返し治療による医療費、
結果的に歯を失うことによる健康面での
ロスがいかに大きなものか。

逆に、
めったに虫歯にならない人
咬む力があまり強くない、歯ぎしりなどのない人
見た目にこだわらない人
これらの人々は健康保険による歯科治療でも
相応の結果を期待できるでしょう。

私は歯で苦労している人たちに
「治療時には費用がかかったが
長い目で見ると結果的には安かった。」
ずっと時間がたってからそう思っていただけるような
治療を提供してゆきたいと思っています。
2012年02月06日 00:00

「医療の質、アクセス、そしてコスト」

医療レベルの高い国として挙げられるのが
主にアメリカとスウェーデンです。

医療費を考慮せずに
とにかくいい治療をしようと考える国と
国の経済を考慮して適正な医療費で
最善の治療をしようとする国、
どちらも正解ですね。

その国の医療レベルを評価するに当たり、
次の3点が考慮されるそうです。

質、アクセスそしてコストです。

アメリカで問題になるのは
コストですね。

驚いたことに
個人破産の原因の半分があまりに高額な
医療費だそうです。

盲腸で1日入院で約200万円、
入院1日につき約100万円とか・・・

スウェーデンはアクセス(受診しやすさ)
に問題があるらしいですね。

2007年時点で
診療を受けられずに
待機している患者が25万人
(人口は900万人)、そのうち
90日以上待たされている人が
5万7千人ということです。

公務員による競争のない医療での
サービスの非効率・硬直化が
大きな問題となっているようです。


日本の医療レベルもかなり高いとされていますね。
WHOは2000年に日本を世界一と評価しています。

乳児死亡率や周産期死亡率の低さ、平均寿命、
急性心筋梗塞院内致命率の低さ、諸々の指標も
世界トップレベルです。

そして対GDP比医療費の低さも
先進国でトップレベル。
CT,MRIなどの機器の設置率も
世界でダントツです。

日本の健康保険制度は大きな視点で見ると
今のところうまくいっている
言えるでしょう。
(債務残高対GDP比で200%の国ですが・・・)

ただし個々のレベルで見ていくと
厳しくなってますね。

各種の先進医療が健康保険でカバーできなくなるのは
時間の問題と思われます。


先ほどの「質、アクセス、コスト」の3点から考えると
今後の健康保険制度からは

高度な治療が外されて保険外になる(質の低下)

受診抑制がかかる。
大病院での初診抑制はすでに始まってますね。
先に電話やインターネットでの相談ののち、
許可を受けた患者のみ受診できる(アクセスの低下)

自己負担割合が増えたり、消費税増税などにより
カバーされる(コストの上昇)

といったことが起こるでしょうね。


ちなみに歯科はすでにだいぶカバーできない範囲がありますね。

福祉国家のスウェーデンでも
歯科については自己負担の割合が
極めて高く設定されているそうです。

歯が長持ちするとか
よく噛めるとか、見た目がきれいとか
そういう点に
費用をかけるかどうかは
それぞれの患者さんの判断に任されるように
なってきているのは
世界的な傾向のようですね。


今年も最後に
小難しい話で失礼しました。

では皆様、
本年もありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
2011年12月30日 00:00

「審美歯科」

今日もセミナーでした。
東京もだいぶ雪、降ってました。
寒かったですね。

内容は審美歯科関連でした。
この分野も著しい進歩をとげています。


10年位前でしょうか
私は接着歯科を主にやってました。

いかに削らずに治すか、という分野ですので
見た目のために削ってかぶせる
当時の審美歯科が実はあまり好きでは
ありませんでした。

できるだけ削らずに治そうとする接着歯科学と
削ってかぶせても、美しい見た目を実現しようとする
審美歯科学

まったく相反する分野のように見えます。

ところが
それらは今は融合しています。

歯科のどの分野もそうですが
最善の治療を求めると
結局各分野の強みが残り
バランスのとれたものになってくるわけです。

今や接着なしの審美は考えられない時代になりました。

接着と審美だけでなく
インプラントと入れ歯の融合、なんていうのも
最近は話題ですね。

ずっと昔、大学の哲学で習いましたが、
相反する二つの理論は
互いに否定しながらも
それぞれのいいところを取り入れ
結局バランスのとれたものに
なってくるそうです。

本当にそうですね。

最近の審美歯科は
だいぶバランスのいいものになりました。

その背景には
急速なナノテクノロジーの進歩や
歯を3Dデータとして処理する
コンピューターの進歩があります。
もちろん接着技術も。


見た目を含めた、トータルな治療
ご遠慮なく、ご相談ください。
2011年02月11日 00:00

「マウスピース矯正」

今日は勉強会でした。

マウスピース矯正の
症例報告会です。

従来の矯正治療はワイヤーを使って歯を動かすわけですが
マウスピース矯正では透明のマウスピースを歯につけることで
歯を動かしてゆきます。

見た目もほとんどわかりませんし、
発音などへの影響もほとんどありません。

この分野は日進月歩で
いいことづくめの様ですが、
残念ながら万能ではありません。

ちょっとシビアなケースになりますと
ワイヤーなしで治すことはいまだに困難です。

メーカーは「どんなケースでも」なんて発表したりしますが、
ちょっと誇大かな、と思います。

でも全期間ワイヤーでなく、
マウスピースと
ワイヤーをそれぞれ使うことで
ワイヤー期間を短縮することはできるでしょう。

状態によっては
マウスピースだけで治せる場合もあるので
ご希望があればご相談ください。
2011年02月06日 00:00

「漂白」

最近当院でも歯のホワイトニングをやる機会が
多くなりました。

以前はホームホワイトニングという、
患者さんが自分でやるタイプを
お勧めしてましたが、
今はオフィスホワイトニングと呼ばれる、
診療室で短時間で行う方法のための設備があります。

ホワイトニング前提の治療、というのも増えてきて
先に天然の歯より白い差し歯を入れたり、
白い詰め物をしておいて
あとから歯の方を白くして合わせます。

オフィスホワイトニングは
1時間程度の施術時間で
グーンと白くなります。

私の歯も白くしました。
実際、昔に比べてとても白くなっているのですが
人間というのは不思議なもので
もともとこのくらいだった気がしてしまうわけです。

困ったものです。

漂白も、歯列矯正も、審美治療もそうですが、
治療前の写真撮影は絶対に必要とされています。

治療後に治療前の写真を見ると、
びっくりします。

こんな色だったのか、とかこんな歯並びだったのか、とか。


その昔、「足るを知る」をテーマに生活をしてみようかと
思ったこともありますが、
難しいですね。

満足せずに追求することは
やっぱりパワーの源泉でもあり
プロの世界は「これでいいや」と思ったら
終わりというところもあります。


オフィスホワイトニング、お勧めです。
笑顔がパッと明るくなります。
機械がちょっと怖いと思う方は
ホームホワイトニングでもいいかもしれません。
2010年11月15日 00:00

「いつのまにか」

いつのまにかブログ、だいぶご無沙汰してしまいました。

今年の夏は、ほんとに忙しかったです。
忙しいといっても私の医院にいらっしゃる
患者さんは多くても
一日に7人とか8人ですが。

虫歯や歯周病のリスクが高く(発生しやすく)
できるだけ再発のない治療をしてほしいという患者さんや

以前に歯科で大変な思いをして、とにかく辛くないように
かつ、いい治療をしてほしい、という患者さん、

そして
最新・最良の方法、材料を使って
とにかく最高の結果を出してほしいという患者さんとか、


まあ、気合が入るわけです。


過去に蓄積された歯科学の知識で解決可能なものもあれば
最新のマテリアルや手法でなければ解決できないものもあります。

昔の論文や匠の技術からの
温故知新の発見が
解決をもたらすこともある一方で

最新の
歯の色をした白っぽい金属や
ナノテクノロジーを駆使した高分子素材
水分を含んだ有機物への接着技術
形状記憶合金の器材や
高強度型のセラミック
漂白技術や
顕微鏡下での処置などが
解決につながることもあります。


まあ、たまらないわけです。
複雑な状況であるほど
気合が入ったりします。


スタッフには「ほんとに好きなんですねえ」と
言われたりしますが、

好きというのとはなんか違う、
でも人生かけるだけの
やりがいは感じるわけです。
2010年11月12日 00:00

「そしてセミナー」

昨日もセミナーでした。
ITI(International team for implant)の
メンバーミーティングでした。

インプラントの治療成績は、世界中で
ものすごい勢いで蓄積されていまして、
ITIでは世界で出版された論文が
5年に一度、総まとめされて
再評価されるのです。

こういう最先端の分野は
根本的な、ほんとに大事な部分は
余り変わりませんが、
枝葉の部分は5年もたつと
だいぶ変わっています。

この「枝葉の部分」が
治療をしていく上で
より楽な治療を提供したり、
より長持ちする結果につながったりするので
やっぱりフォローが必要です。

お昼はクーポンをもらったので
フカヒレご飯を食べてみました。
最近は専門のチェーン店があるんですね。
2010年05月24日 00:00

「鎮静法という選択肢」

今日は日曜日でしたが診療でした。

木曜日(休診日)は顕微鏡学会のセミナーでジムに行けず、
今日は診療で合気道に行けなかったので、
体がなまってちょっとまずい感じで、
夕方子供と行った公園でナゾの懸垂男になってました。

ちなみに今日の診療はインプラントの埋入手術でした。
インプラントの場合、診療室をクローズして
室内を消毒して行います。

患者さんは若くて健康な方ですが、
顎の骨の形から処置が困難であることが
予想されましたので、
万全な体制で臨みました。

朝から診療室の消毒をし、
院長の私と専門医、アシスタントDr.、歯科麻酔科医、
患者さんとその付き添いの方で、
狭い診療室がかなりの人口密度でした。

手術は部分麻酔と
点滴から入れる鎮静薬で行います
(静脈内鎮静法といいます)。

オペ自体は結構ヘビーでしたが、
患者さんはスースー眠られていて、順調に終わりました。

時間は2時間でしたが、患者さんは眠っていたので、
手術後「なんかあっという間でした」と驚かれていました。


私も研修医時代や勤務医時代に、全身麻酔や
静脈内鎮静法の経験は積んできていますが、
今回、久しぶりにその有効性を実感しました。

歯科治療が苦手であった人にも
受け入れてもらえるような配慮をしながら、
なおかつ良い治療をする、というのが
私の努めであると考えていますが、

治療前から明らかに困難が予想される治療や、
どうしても歯科に対する恐怖心が強い方の場合、
鎮静法の利用も選択肢の一つとして、
あっても良いのではないか、と思います。
2009年10月04日 00:00

「歯列矯正」

昔、学生時代に
「法歯学」という教科がありました。
「法医学」の歯学部版で、法医学の後に
習います。

この「法歯学」では
歯や歯並びなどからいろいろな情報を得ることを
習います。

個人の特定や、年齢の推定などなど

ここでポイントなのは
歯や歯並びから
「年齢の推定ができる」ということです。

人は年を取ると誰でも
歯が擦り減ってきたり、
歯並びがガタガタしてきたり、
かみ合わせの高さが下がってきたりします。
(昔、クシャおじさん、なんていましたね。
あの方は歯がなかったようですが、まあ
あんな感じです。)

しかしこの加齢変化は
元に戻すことができます。
若かったころのように

それは、歯列矯正です。
すべてではありませんが
すくなくとも、ガタガタしてしまった
かみ合わせは、若いころのように
戻すことができます。

矯正をすると
口元に張りが戻ってきます。

歯列矯正は
超強力な「アンチエイジング治療」
といえるかもしれません。
2009年09月14日 00:00

「インプラント」

最近ブログを書きますと
記事の下に広告が出てきます。

歯科医院の広告、多いですね。それもインプラント。
「激安」「年中無休」「生涯保障」などなど

確かにインプラントはとてもよい治療法です。
でも気をつけましょう。

もちろん
インプラントをやっている、いい歯科医は
たくさんいるのですが、

しかし一部には
歯を救うための
歯科の技術を信頼していない歯科医というのがいます。
(驚かれたかもしれませんが。悲しいことです。)

「どんなにいい治療をしても
またすぐ再発するので
だったら虫歯にならないインプラントに」
ということのようですが

「いい治療をしても、またすぐ再発する」
そんな事はないと思います。

その人がそういう考えになるまでには
それなりの紆余曲折があったのかもしれません。
その人なりにがんばったのかもしれませんが

恐らく、勉強の仕方に問題があったんだと思います。

もし
数年おきに天然の歯が次々インプラントに置き換わり
一生涯のうちに猛烈なコストがかかり、
口の中に無計画なインプラントが乱立するとしたら、
「生涯保障」であっても、たまりません。

私はインプラント否定派ではありません。
12年前から臨床で使用しています。
しかしそれは、数ある治療法のひとつに過ぎません。

インプラントは「天然歯を守る」使用法であるべきです。

極論しますが
辛い思いをされる方を一人でも減らすために
あえて書きます。
次のような医院では注意してください。

・かみ合わせの調整ができない(入れ歯が苦手)
・神経の治療をして1年後にレントゲンを見ると
 コンスタントに膿がたまっている(黒い影が見えます)。
・歯周病のポケット測定をしない。
・インプラント治療のあと、「もう来なくていい」と言う。

では
2009年09月03日 00:00

モバイルサイト

医療法人 入江歯科医院スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

院長の私的ブログ 日々雑感
ブログ一覧