~かけがえのない歯を大切にする治療、価値ある治療結果、そしてつらくない治療をめざしています~

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日々雑感

遺伝形質

遺伝的な形質が原因で歯科の一般的な麻酔薬が効きにくい
人たちがいることがわかっています。

一般的に局所麻酔薬は神経細胞の
ナトリウムチャンネルというものを
遮断することで効くのですが

一部の遺伝形質を持つ人達は
この構造や発現量が異なることにより
歯科で一般的な
リドカイン(商品名:キシロカイン)
という麻酔薬が効きにくい

そういう方たちが
効きにくい状態で無理やり
治療を受けてしまったために

歯科恐怖症になってしまっている
人たちがいます。

ただし遺伝形質により
麻酔が効きにくい確率は
低く、めったにいません。

しかし麻酔は効くものだと
信じ込んでいる歯科医に治療を受けると
そういう方たちは悲劇です

まじめで気遣いのできる方たちが
我慢が足りない、みたいな
評価を受けたりしている
本当に気の毒です。

少しでもあやしいと思ったら
私が痛くないか、しみないかと
聞くのは、そういう理由があります。

リドカイン(キシロカイン)が効かなくても
セプトカイン(アルチカイン)
なら効く可能性が高いです。

セプトカインは最近日本でも
薬事承認されましたが

当院ではリドカインの効かない人には
以前はアメリカから取り寄せた
セプトカインを使用していました。

もし自分は麻酔が効きにくい、
と感じている方は

ぜひお伝えいただき、
対応策を見つけて
治療に望めればと
思います。






 
2025年05月13日 04:44

セプトカイン

最近新しく薬事承認された麻酔薬に
セプトカインがあります。

海外ではアーティカイン、日本名はアルチカイン

何が違うかというと
効きが違います。

歯科の従来の麻酔薬でも効かなかった症例や
効きにくかった人でも
効く可能性が高い。

私は6-7年前に
従来の麻酔薬でどうしても効かない患者様に
アメリカから購入し

どこに行っても麻酔が効かず
恐怖症のようになってしまっていた
数名の患者様たちにこれを使い
ばっちり効いて
難なく治療が完遂できました。

特に問題になるのは
下の奥歯

従来薬剤を使用した方法で
伝家の宝刀のような
伝達麻酔という方法もありますが

炎症を起こしてしまっていると
無痛的に治療できる確率は
それでも
2割まで下がります。

伝達麻酔では下歯槽神経と舌神経という
神経を麻酔します。

理論的には下の奥歯のすべての歯に
効くはずなのですが

なぜか効かないことがあります。

その下にある顎舌骨筋神経経由で
痛みを感じているという説が以前あり

数年前に麻酔学会に出た時に
「私は顎舌骨筋神経の関与を疑っています!」
と、マイクを取って主張していた研究者がいたのですが

すでに否定されているのを知らないのだろうか
と思ったものです

ですので従来の麻酔が効かなくて困った人も
新しい麻酔薬を使用することができます。

ただ私のイメージとして日本人には効きすぎる感があり
普通に効く方であれば通常の麻酔薬でいいと思います。







 
2025年04月10日 16:49

バンカラ?

今日は休みですので
朝早く家を出て歯科用チェアーの
ショールームに行きました。

いつもは職場まで車で
ほとんど外を歩くことがないので
久しぶりに、だいぶ歩いた感じがします。

家から出て歩き始めると
自分の足音がポクポク鳴っていることに気づきました。

昔は病院に勤務していて
入院患者さんを起こさないように
足音をさせずに歩く習慣がついていて

なんで足音がしないの?と
一般の人からはびっくりされたりしたのですが

いつの間にか
どうやら踵(かかと)重心に
なって足音がしていたようです。

1キロくらい歩くと
つま先重心に戻ってきた感じでした。

ちなみに私の父も
警察学校とか出ていて
足音がしない人でした。
今はちょっと歩くのは大変ですが

そして久しぶりに田園都市線の満員電車に乗り
都心まで行ったのですが

私は20数年前から横浜に住んでいて
はじめの10数年間は広尾まで電車通勤していて

田園都市線の満員電車で通勤し始めたころに感じた
違和感をまた感じました。

渋谷駅とかで多くの人が降りるのですが、
お客さんが無言で前の人を押しまくることについて

「わかってます、わかってます、
降りるので大丈夫ですよ」と言ってあげたいくらい

埼玉の奥の方で育った私としては
これは都会の人のプライドなんだろうか、
と当時思ったりしました。

私は高校から大学、大学病院勤務の初めころまで
埼玉から電車通勤していて
あっちはだだっ広い畑や田んぼが
いくらでもあって

秩父おろしとか赤城おろしとか
硬派でバンカラ?というか

高崎線という電車で東京に出てくるのですが
降りるときは
「すいません、降ります!」とか
「降りまーす」とか

ちゃんと声を出せないこと、は
恥ずかしいことだ、という
価値観がありました。

だだっ広い畑で
ちゃんと声を出してコミュニケーションする
農家さんとか、
地方出身者が多かったからでしょうか。

最近はわかりませんが

あと合気道の道場でも
ゴニョゴニョ、と言って
入ってくる青年がまれにいて
(ほとんどの青年はちゃんとしてます)

この子たちは
子供のころから見ていますので
聞こえない挨拶は
無視しているのと一緒だよ、と話します。

そういう青年はどれくらいの声を
出していいかわからないようなので

相手との距離をさっと見て
相手が道場の端にいるなら
道場の端に届く大きさの声で
挨拶してくださいと

そばにいるなら
その人に届く大きさでいいですよと
説明します。

近くで大きい声だと
威圧感をあたえてしまい

威圧感を与えるのは
合気道ではナシですので

もう30年くらい前でしょうか
北欧に留学していた友人が言っていたのですが

昔は今のように英語を学べなかったので
なんとかTOEFLを取って留学したが
英語がわからず苦労する人が多かったようです

世界中から集まる、会話に入れない留学生でも
Good Morning! が元気に言えるやつは
大丈夫だと

いろいろな話が、もう古いのかもしれませんが

あと先日合気道の青年たちと飲んでいて(20代以上)
今はいろんな情報が手に入りやすくていいねえ、みたいな
非常におじさんっぽい発言をしてしまったところ、

手に入りやすい分、大変なこともあるんですとの事。

確かにそうかもしれません。








 
2025年04月10日 15:13

前歯の歯並び

一般的な傾向として
年齢とともに
歯並びは変わってきます。

加齢とともに
人の骨格自体が変わってくるのと、
歯も全体に前方に傾斜してくる傾向があり、

その結果、歯並びが変わってきます。

よくあるのは
下の前歯の歯並びが
ガタガタになってくる

昔はこうじゃなかったのに、
と良く聞きます

ガタガタしてくると
見た目の問題だけでなく
食物が詰まりやすくなったり
歯垢や歯石が溜まりやすくなったりします。

状況にもよりますが
この歯列不正は
矯正治療で治すことができます。

歯並びの悪化は
年齢とともに進みますので、
できればあまり進まないうちに
矯正することが理想です。

昔は矯正と言うと
歯にワイヤーをつけたりして
ちょっと心理的にハードルが高かったのですが

今は透明のマウスピースで
ほとんど気づかれずに
矯正が可能です。

歯並びを3Dスキャンし
画面上でお顔と矯正後の歯並びを
シミュレーションし

それを見て、治療するかどうかを
決めることができます。

以前は私も
ワイヤー矯正をさせていただいていたのですが
今はワイヤーで治療することは
まずなくなりました。

前歯がガタガタしてきたら、
早めにご相談くださると
よろしいかと思います。

ただし、
加齢による骨密度の低下に対して
骨粗しょう症の治療薬をご使用の場合
矯正治療時の歯の移動速度が著しく遅くなることが
知られており、

できれば
そのような薬剤を使用する前に
矯正治療をなさることをお薦めします、

もし矯正治療が
現実的に困難だったとしても

ホワイトニングや
パウダークリーニング、
古い詰め物やかぶせ物のやり直しなどで
見た目は大幅に改善可能ですので
一度ご相談くださればと思います。





 
2025年03月31日 07:37

権化

ホームページの経歴のところに
記載させていただいていますが

もう30年以上前の話ですが
私は日本大学の歯学部を卒業して
慶応大学の附属病院に就職しました。

診療室には慶応を出る時にもらった
旗をかけているので

日大卒の社長さんとかに
「なんだ先生は日大じゃないんかい!」
とか言われるので
説明するのですが

逆に
「先生も慶応なんですね!」と言われてしまうと
いや、卒業したわけではないんだけど、みたいな

ちょっと複雑で

ちなみに
日大卒の社長さんなどでよくある気質のことを
「日大型(にちだいがた)」と言います。
(親分肌で情に厚く面倒見がいい)

そして慶応の入局試験の後
面接があり
「君は薬理が苦手だね」と言われるも
なんとか合格し

入局後は歯科部門と口腔外科部門を
半年ずつぐるぐるローテーションしつつ

麻酔科にも半年間
放り込まれて

お医者さんの中でのカンファレンスとか
きつかった

業務にも慣れたある日

その日の病棟の仕事をやって
深夜の2時ごろ非常灯だけの、
ほぼ真っ暗な病院内を延々
一人歩いてロッカーへ

そういう時は怖いかと言うと
そうでもなくて

一般的に病院は人が亡くなるところ、というイメージですが

じつはそのイメージとは逆に
産科とかもあって
この世の光が生まれてくる場所でもあるし

夜も眠らず患者さんの命を救おうとする
医療従事者達のパワーがみなぎっている所なので

一人で暗闇でも
そんなに怖いとは感じなかったです。

癌の末期の患者さんとかもいて
ある夏の日、病室で夕方の処置をしていると
網戸の窓の
神宮球場のほうから大歓声が聞こえてきて

「あれは何ですかな」とおっしゃるので
「サッカーだと思います」というと
「ほう、サッカーですか」と

中庭があって向かいに病棟があったのですが

その病棟の屋上にお坊さんが座っている
後姿が見えると

それはあるかもしれないなと思いました。

たくさんの人間の生死があり
それを支える医療従事者達の莫大なパワーもあり
病院の頂点でそれが権化と化していても
おかしくはないなと
思ったのでした。








 
2025年03月27日 18:40

ブログ

今日は時間ができたので
過去のブログの内容を読んだのですが

このブログを始めてから
もう16年が過ぎようとしているんですね。

当初は
とある歯科医のつぶやき、みたいに
匿名で書いていたものです。

医院のHPを作成したのを機に
医院ブログにしました。

なんだか
生意気なことを言っていたり、
書きかけで載せてしまっていたり

今読むと
微妙なものもないわけではないですが
この医院の軌跡でもありますし
残していきたいと思います。

でも当初から
患者様に大変な思いをしてほしくない
できるだけ
怖い思いや痛い思いをしてほしくない
というコンセプトが

ぶれずに
来れていることは

医院の誇りでも
あります。


 
2025年03月27日 18:17

麻酔量

初診の患者様がいらして
写真やレントゲンなどの資料取りをさせていただいて
治療方針を相談して、方針が決まり

そしてまず一回目の治療で
麻酔が必要となった場合

気を付けていることとして

まず痛くないように、と言うのは当然あるのですが、
「効かせすぎない」ということにも
気を使っています。

麻酔の効きには個人差があり
かなりの量を使ってもなかなか効かない方もいらっしゃる
一方で
通常量でガツンと効いてしまって
後が大変だったと言われることもあるからです。

初めの治療で麻酔で嫌になってしまって
後が続かないのは困りますので
多すぎず、少なすぎず
気をつかいます。

時には申し訳ないことに
当てが外れてしまうこともあり、
効きが足りないような場合には
すぐ追加をしたり、
虫歯の部分に薬を入れて
いったん終了したりして
対応します。

ちなみに一般的に使われている
浸潤麻酔という方法は
効かせたい部分に、文字通り
麻酔液を浸潤させる麻酔法ですが

歯は場所によって効き方が違い
効きにくい歯に浸潤麻酔をする場合、

それまでに撮影したCT画像があれば
皮質骨から根の先端までの距離を見たりして
量を調整したりします。

皮質骨から根尖までの距離が近い場合
すぐに麻酔が浸潤しますが、
大部分の麻酔薬が
血流の良い粘膜下にとどまるために
逆に麻酔効果が消えるのが早い傾向があります。

はじめは
麻酔においても
そうやって試行錯誤で
適切な関係性を
探っていくしかないと
考えています。





 
2025年03月13日 17:12

フラップレス

昔に比べ
最近のインプラントは楽になりました。

それは
テクノロジーの進化ゆえなのですが

その背景には
CPUやGPUなど
コンピューターの演算速度の高速化などによる
AIの進化があり

その結果
コーンビームCTというCT機器や
イントラオーラルスキャナーと呼ばれる
3Dカメラ、3Dプリンターなどが
安くそして高性能になり
一般の歯科医院でも導入できるようになり

ジルコニアなどの
素材の多様化、
工作技術の進化などなど

昔は大変でした。
レントゲン写真から骨の形を想像し
歯肉を開いて骨を直接見て
この方向かな、いや
もうちょっとこっちか、

みたいに埋入して
骨とくっつくまで6ヵ月とか待って、とか

今はほとんどの場合
パソコン上で計算した位置や深さにぴったり入る

サージカルガイドというものを
3Dデータから作って
切開とかせずに
麻酔して、埋入するだけで終了、
といったことが多いです。
そして骨とくっつくまで3週間のものが
薬事承認されています。

フラップレス埋入、などと言います。

もし私の歯が将来ダメになったら
この方法でインプラントしてほしい
(自分で入れるかもしれませんが)

一方で最近は
閉院する歯科医院がかなり多くなっているらしい

ご高齢の先生方が
テクノロジーの進歩についていけなくなったり
そもそもモチベーションがなかったりして

そろそろ潮時か、と
医院を閉められることが多いようです。

昔からの技術や知識は
素晴らしいものです。

ただ今はそれにさらに、
テクノロジーを融合させて
良いものを、もっと良いものに生かす時代が来ているのでは
ないかと思います。



 

2025年03月11日 21:45

天然の歯とインプラント

私は大学歯学部を卒業したのち、
とある医学部の附属病院で研修を受けました。
もう30年も前のことですが

研修医と先輩たちが医局で休んでいた時、
10年くらい上の口腔外科の先生が飛び込んできて
「出た、出た、とうとう出た」とのこと。

手には英語論文があり
「Dental Implant induced Squamous cell carcinomaだ」とのこと
(歯科インプラントが誘発した扁平上皮癌)

当時はインプラントに疑念を持っている歯科医が多く、
なぜこんなに上手くいくのか、
話がうますぎるのではないか
きっとそのうち大きなしっぺ返しが来るに違いない、
のように、
インプラントに対して思っている人が少なくなかった

その話を聞いて当時の私も、
「これはまずいのではないか」と思いましたが

その後その関連性は否定され、個人的な臨床実感としても、
正直、全く関係がないように思います。

初期の頃に感じていた、
インプラントに対する
話がうますぎる、
いつかしっぺ返しが来るのでは、といった思いは
全く当たらなかった

それどころか
患者さんのインプラントは生活の質を高め
栄養状態を改善し
健康寿命を伸ばしている、という実感の方が
はるかに強く感じます

あと当時私は

インプラントを入れた患者さんが歳をとって
歯を磨けなくなったらどうなるのか、

インプラントが炎症を起こしたりして
これは社会問題になるのではないか、
なんて思っていましたが

どうやらこれもあまり問題にならず

今は老人ホームに時々診察に行っていますが、
インプラントが問題を起こすどころか
インプラントに日々支えられている人も多い

ということで

初期の頃からも日々進歩し
今は非常に優れた治療法となったインプラントですが、

私としては
インプラントは神様が造った天然の歯ではありませんので
そういったものに対する慎重さは失ってはならないと
思っています。

神様が造った天然の歯をまず大事にして
その歯がいろいろ問題を起こして
やむを得なくなったら、
必要に応じて
最小限のインプラントを使用して
人生を全うしていただくのが
いいのではないかと

考えています。






 
2025年02月23日 15:25

消えた「心因性」

医学的には痛みには3種類あります。

熱いものに触れたり、ぶつけたりした時に感じる
侵害受容性疼痛、と

末端から中枢に至るまでの途中の神経線維に障害が
生じておこる、神経障害性疼痛

そして中枢で問題が生じておこる、
痛覚変調性疼痛

の、3つです。

虫歯の痛みは一般的には歯髄の中の受容器で感じる
ことが多いので、侵害受容性疼痛

(例外あり)

ヘルニアで坐骨神経痛とか、
三叉神経痛、
帯状疱疹後神経痛などは
痛んでいる場所自体に問題はなく、
そこに至るまでの神経に問題が生じているので
神経障害性疼痛

そして脳など中枢での変化により
痛みの感受性が高まっておこるのが
痛覚変調性疼痛

PTSDやうつ、その他さまざまな経験や状況により
脳内の電気信号に変調をきたし
痛みを感じたり、強く感じてしまう

以前はこの痛みを
心因性疼痛、などと表現されていました。

ただこの表現だと
心の問題、精神的な問題といった
非科学的なとらえ方がなされるため
今は使われません。

心因性の疼痛、とは
今は言わないのです。

どう見ても異常がなくても
患者さんは痛みを感じていることがある

それは脳内の電気信号に変化が起きてしまっているためで
決して、気のせい、といったものではない

そして我々歯科医が
気を付けなければいけないこととして

よくわからない痛みに対して

安易に歯を削ったり、歯髄を取ったりしては
いけないということです。

歯が原因でない歯の痛みを
非歯原性歯痛といいます。

実は正常な歯髄なのに
非歯原性歯痛を歯髄の炎症と
勘違いして
歯髄を取ってしまうという事例が
存在します。

当院ではできるだけ
歯髄を取らないようにしています。

なぜなら歯髄を取れば
歯の寿命が短くなることが多いからです。

特に痛みの原因がよくわからないときは
決して神経を取ったりしません。

たとえ歯の痛みの訴えであっても
実は筋筋膜疼痛など非歯原性歯痛で
歯髄を取らなくても、
理学療法で治ることもあり

それが少しでも疑われれば
歯髄は取りません。

そのような場合、何で歯の治療をしてくれないのか、と
言われることもありますが

歯の治療をしても治らない痛みで
別の原因の可能性があるからです。

また万一にも間違えて取ってしまった歯髄は
決してもとには戻らないからです。





 

2025年01月31日 22:02

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