~かけがえのない歯を大切にする治療、価値ある治療結果、そしてつらくない治療をめざしています~

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日々雑感

シリコン印象の話

クラウンなどの型取りをする時、
最近は3Dカメラを使うことも多いですが、

昔ながらのシリコン印象材という材料も
まだまだ使います。

虫歯が歯肉よりも下に進んでしまった場合
歯肉縁下、という言い方をしますが

この場合、まだ3Dカメラでは
うまく撮影できません。

そういう場合は
以前からあるシリコン印象材を使うわけですが

ただシリコン印象材は職人技で
超集中で一発勝負で決める必要があり

慣れてない人はなかなか
上手くいかず、
苦労したりします。

マウスピース矯正の
インビザラインは
今は3Dカメラですが

昔はシリコン印象で
それに慣れていない矯正専門の先生方は
ものすごい苦労して
型取りをしていたものです。

私は慣れていますので
大抵、一発で決めますが
(全部ではないですが)

こういう、歯科の治療には
超集中して、一発で決める、
みたいな状況が

まだ時々あります。

集中するときに
目が近くなって
姿勢が悪くなると

失敗しやすくなります。
全体が見えなくなるからです。

私が昔、憧れていた
世界的に有名な
日本人歯科医がいて

その人は1ドル360円時代に
アメリカに留学して
フロリダ大学の教授にまでなって
全米の大学で使われるような教科書を書いて
学生達が選ぶ最優秀教授賞までとって

そういうすごい人ですが

診療室でブリッジを作るために
きれいな歯を削らなければならないような時には

まず神棚に手を合わせてから
始めるという話を聞き

生命に対する畏敬の念や、
医療に対する真摯さを持ち続ける
やはりすごい人なんだなと思ったものです。

ずいぶん昔のことですが

当時のスタッフに
その話をしたら

それぐらいしなきゃ、
と言われたのは

いい思い出です。













 
2025年06月16日 10:17

適合性について

前回の続きです。

前回、3Dカメラのデータから
バーチャル上で設計したクラウンを
CADCAMという方法で製作した場合

従来の一般的な方法より
精度がかなり高いクラウンが出来てきて

歯科医側が
マイクロスコープや
ルーペなどを使いこなして
精度を出せる技術を標準化していないと

逆に合わない、という結果になって
しまうことがある話をしました。

それを防ぐために
今度は技工士さん側が
緩め大きめのクラウンを作ってきてしまい、

それを結局、時間をかけて削って合わせて
それからセットするという
昔と同じ状態になってしまうという件

これに対処するために
技工士さんから3Dのデータを送ってもらい、
ポイントごとにチェックする、ということをやります。

こういうことをやろうとすると
昔は現物を宅急便でやり取りして
大変でしたが、

今はネット経由で瞬時にやり取りができますので
だいぶ楽になりました。

おかげで休日でも旅行中でも
チェック依頼が来て

修正依頼をかけるとすぐ修正して
戻ってきますので

また返信して

ある意味大変なところもありますが
タイムラグなしで仕事が進むのは

ネットとAI時代の
恩恵かなと思います。




 
2025年06月16日 09:45

標準化

最近は
3Dカメラで撮影して
CADCAMで製作したクラウンは
驚くべき精度を持っていて

特に人間の
骨や歯根膜の
ひずみまで考慮して
作られていますので

ほとんど無調整で
入ることも多いです。

ただし
人の顎は動く上に
その動きに、さらにひずみが加わるので
その点ではまだ調整が必要ですが

でも本当に良くなりました。

しかしながら、
残念なことに
最近は
歯科技工所の方で
ぴったりに作らなくなって来ていることがあります。

どういう意味かというと

歯科医師の技術が
本来されるべき標準化が
なされていないために

例えば
3Dの型取りの時に
隣の歯の隣接する面に
歯垢がついていると
歯垢なのか歯なのか認識できないAIは
歯垢にぴったり合うクラウンを作ってしまって
結局口の中では
合わないクラウンになります

仮歯を外した時に
きちんと仮付けセメントがとれていないと
クラウンが浮いてしまいますし

かぶせる歯にとがったところ(エッジ)があると
3Dカメラはポリゴンで取り込みますので
丸く読んでしまい
やはり浮いてしまう

手技の標準化ができていないと
クラウンは本来の位置に入らず
(シーティングしていない、といいます。)

その結果
歯科技工所ではぴったりのものを作ってきているのに
困ったことに
歯科医が、合ってないと言い出し
再製作とかの話になり

結局技工所側では
緩め大きめで作ってきたりして
では歯科医側で削って合わせてくださいという
ことになり

結局歯科医が
以前のように
実際の歯に削って合わせて
入れるという

元の木阿弥のような状態に
なったりします。

標準化のためには
「見える」ことが極めて重要であり、
当院がマイクロにこだわる理由でもあります。

そうやって
結局問題になるのは
ヒューマンエラーであり

最近ChatGPTの最新バージョンが
シャットダウンの命令を無視したうえ、自ら
スクリプトを書き換えてそれを免れようとしたという話が
ありましたが

AIにしてみれば
結局高頻度でエラーを起こすのは人間であり

「人間がかかわるこのプロセスを自動化すれば
完璧な仕事ができますけど
いかがしますか?」と

聞いてくるのも
時間の問題かもしれません。




 
2025年06月08日 17:21

食事量

老人施設に父が入所したとき
血圧が少し高めとの事で
減塩食にしますか、と聞かれましたが

90代ですし
もう、減塩食でなくて
美味しいものを食べさせてあげてくださいと
言いました。

以前、当院で
看護学の分野では
重鎮と言われるご高齢の看護師さんの
歯の治療をしていて
いろいろ話をしました。

大組織のトップとしての
その方の意見には
多少理想論的なところも
あるかもしれないですが

医師は、
患者さんが食べる食事量が少ない時に
食欲がないのは
調子が悪いのではないか
と考えるが

看護の分野では
患者さんが食べなければ
まず「不味いんじゃないか」と
思うべきだと

離乳食を食べない赤ちゃんがいたら
まず、それ美味しいのか、と
疑ってみるべきだとの事

ミキサー食を作る時でも
一品ずつ別々に作れば
かなりおいしいものが作れると

現場は人手不足で厳しいのだと
思いますが

医師と看護師の視点の違い、という
話を聞いた時に
なかなか面白いと思ったのでした。

ちなみに必須栄養素には
アミノ酸やビタミン、脂肪酸やミネラルなど
40種類ほどあり

その中の1つでも完全に欠乏すると
人は死んでしまいます。

ではその40種類に対して
「大変だ、~が足りないから食べなきゃ」
とか思いながら人は生きているわけではないですね。

人は食べ物を栄養と思いながら食べているのではなく

食べたいもの
美味しいと思うものを食べていれば
時にバランスが良くなかったとしても
きちんと40種類はクリアして
人は生きていられる

糖尿病や高血圧には注意が必要ですが

まず生きていくためには
食べたいと思うこと
美味しいと思うことが大事で

そろそろあれを食べたいな、みたいに
思うことがあったら
それは体からのサインなのだと思います。

私の友達で農家をやっている家があって
白菜なんかを一玉もらうと
それはもう立派で

我が家は何日も白菜を食べても
なかなか無くならず

こんなのが畑じゅうに出来る
大地のパワーは
とてつもないな、と
思いました。

友人はそれぞれの野菜の
旬の時期が来ると
そればっかり食べてると
笑ってましたが

インフルエンザになったことが
ないらしいです。

大地のパワーをもらい、
旬のものを食べる、ということは
本来の生命力を
覚醒させるのかもしれません。








 
2025年06月05日 22:19

メモ

今日は木曜で休みでしたので
家で部屋の片づけなどをしていました。

私も年齢的には
人生の折り返し地点を過ぎたので

(とっくに過ぎてますが)
無駄なものを処分していこうと
思っています。

いつか必要になるかもと
取ってあった
書籍などは
いつの間にか
情報が古くなってしまっていて
だいぶ処分しました。

それらを片付けながら、
その本の中の手技を見て
昔はこんな風にやって
苦労してたんだよなとか

今の若い先生は
デジタルネイティブとか
マイクロネイティブ、みたいに

すでに学生のころから
ネットを使いこなしたり
マイクロで教育を受けていたりして

時代はどんどん変わってゆきますね。

それでも2-3年前までは
臨床の様々な疑問を解決するための
文献検索能力は
努力して身に着けるものとされていたのですが、

それさえも
以前は人力で数時間かかっていたような検索を
今はAIが数秒でやってくれるようになりました。

時々変なことを言うので
確認は必要ですが

これからの医療従事者は
AIネイティブで
世界中の臨床報告や
実験結果についてのまとめを
数秒で手に入れることができる時代

これから必要とされるのは
AIに対する
質問力や
AIの検索結果に
ツッコミを入れて
より正確な答えを引き出させる能力かも
しれません。

AIの回答にツッコミを入れると
「とても鋭い指摘です、おっしゃる通り…です。以下に
より適切で正確な観点を示します」
と返してきて、
本当に機械と話しているんだろうかと
思います。

それから
本棚の古い手帳を整理しようとして

何となく開いてみたら
15年前に書いたメモに
こうありました。

「安全性、確実性、快適性において
最高を求める人達に対して
最もシンプルな方法で結果を出してゆく
つらくない様に、親切に」
との事。

こんなことを考えてたんだなあと思うと同時に
その一つ一つの単語には思い入れがあり
こういうものは似たようなものがAIで作れても
それは哲学にはなりえないよなと
思ったのでした。




 

2025年06月05日 20:23

ブースター効果

先日スーパーの魚売り場で
アジとソイとホウボウを買ってきて
味醂を煮切って胡麻を炒って
海鮮丼とあら汁を作って
我ながら
なかなか上手くできましたが

スーパーの人ごみの中を歩いたからか
風邪気味になりました。

その前も町田駅前にパソコンを買いに行って
人ごみの中を歩いたら
なんだか風邪っぽくなって

最近は車通勤になって
患者さん、スタッフ合わせても
1日10人も会わない生活

昔、電車通勤だったころに比べて
免疫が鍛えられていないのか

免疫力は
実際に病気に感染しなくても
感染者がそばに来るだけでも
強化されるらしいです。

これを
ブースター効果と
言うらしく

最近帯状疱疹にかかる人が増えているのも
昔は水ぼうそうの子供がしょっちゅう周りにいたために
ブースター効果で
水痘・帯状疱疹ウイルスに対する
免疫が強化されていたのに、
最近は水ぼうそうの予防接種のために
その機会が減ったから、らしいです。

帯状疱疹になると、その後に
頑固な神経痛で苦労したり
ハント症候群といって
顔面麻痺やめまい、難聴を引き起こすこともあり
大変なことになることもあるので

帯状疱疹の予防接種は
打った方が良さそうです。

また人に会うことは
感染症のリスクを高めるようで
実はリスクを下げている、ということも
あるようです。







 
2025年05月26日 22:44

治療時の眠気

治療を受けている患者様が
眠くなってしまう、という問題があります。

寝てる間に治療が終わった、とか
うとうとしていたら
いつの間にか治療が終わってた、
と言ってもらえることもあり、

ああ、リラックスしてもらえたんだな、と
嬉しくもなるのですが

これは人それぞれで
大部分の方が問題なく治療できるのですが、

まれに、うとうとしてくると
口を閉じてしまう方もいらっしゃいます。

動いている機械を噛みそうになったり
治療中の歯が見えなくなって
非常にやりにくく危険になり

そのような場合は、治療中
バイトブロックというものを
噛まさせてもらいます。

バイトブロックが必要になる人は
1か月に一人いるか、いないか、くらいですが

私としてはあまりやりたくないです。
唾を飲み込めなくなるし
口をあいたまま固定されるなんて
不快だと思います。

ただ安全上
やむを得ないことがあります。

昔、行きつけの美容師さんで
とっても感じの良い、ソフトな雰囲気の方なのですが

散髪してもらっているときに
日々の疲れから
ウトウトして頭をコックリコックリ
し続けてしまったようで

急に
「ちょっとお客さーん!」と怒られて
びっくりしたことがありますが

昔は歯医者さんでも
患者さんに安心感や快適性を提供してしまうと
寝てしまって危険なので
多少は緊張感を持たせなければダメだと
いう極端な意見もありました。

もちろん
私はあまりしたくないのですが
危険防止のためには
必要なこともあるのかもしれません。

ウトウトした際に
口を閉じてしまう方には
申し訳ありませんが
危険防止のために、ご相談のうえで
バイトブロックを使用させていただくことが
あるかもしれません。

バイトブロックも
いくつかサイズを用意していて
使用時もできるだけ快適に
治療をお受けいただけるよう
努力したいと思います。



 
2025年05月23日 08:13

睡眠問題

歯科で睡眠問題と言えば
睡眠時無呼吸を扱うことが多いです。

いわゆるいびき、と
睡眠中の間欠的な呼吸停止です。

それにより睡眠中に脳が覚醒してしまったり
心臓に負荷がかかったりします。

正しくは閉塞性睡眠時無呼吸といいます。

もちろん睡眠障害を生じる原因、疾患としては
これ以外にも多数あり
60種類以上の原因、疾患があるとされています。

睡眠問題により
仕事のパフォーマンスが上がらないことなどによる
国内での経済損失は
15兆円とも試算されています。

なお睡眠時無呼吸のために
医科、歯科に受診している患者さんは50万人

受診していない
潜在患者数は500万人ともいわれています。

これがもたらす健康被害としては
心筋梗塞などの心血管イベント発生率が
3倍になり
不正脈の発生率が4倍になり
脳血管障害、高血圧、糖尿病、肥満に
関係することが知られています。

歯科で製作する口腔内装置で
解決することもありますが

まず医科に紹介させていただき
原因疾患の検査と
PSG(ポリソムノグラフィー)といった
睡眠検査を受けていただき

睡眠障害に対する
アプローチの方法をどれにするか
検討する必要があります。

扁桃などが関係している場合
耳鼻科での対応になることもありますし、
歯科での口腔内装置が
適応になる場合もあります。

患者様ご本人の健康寿命の伸長にもなり
ご家族の睡眠問題の改善にもつながる
いびき、への対応

ご相談いただければ
お力になれるかもしれません。










 
2025年05月13日 17:51

AI

最近はかぶせ物などを作る際の
型取りの時に
口腔内スキャナーという機器を使うことが
多くなりました。

これを導入する際にも
どの機種がいいか、とか、どう違うか、とか
どういう時にはどの機能が有効か、とか
さんざんChatGPTに相談して

質問者のレベルに合わせて
回答のレベルを変えてくるAI

ホントになんという時代が来たのでしょう。
最近はあまりgoogle検索もしなくなってきました。

ちょっと前まで
人工知能やロボットが進化すると
人間の仕事で単純作業は
ロボットに奪われるのではないかと言われていましたが

昨今のAIの進歩は
単純作業でなく、むしろ
医師や弁護士などの高度な知的労働や
デザイナーなどの創造性を必要とする仕事を
人間から奪おうとしているようです。

で、口腔内スキャナーで製作した
かぶせ物などのクオリティーが
低いかというと、
全くそんなことはなくて

むしろ残念なことに
腕のいい技工士さんが
手作業で作ったものより
ぴったり合ったりします。

なぜかというと
従来の技工操作では
かぶせ物を作るのに
型を取り、
そこに石膏を注いで模型を作り
その上でかぶせ物を製作していました。

こういう作り方で
生体にぴったり合うかぶせ物を作るためには
精度が大事だ!と
探求し続けてきたわけですが

石膏模型と違って
人間の歯並びは噛み締めると歪みます

口腔内スキャナーで製作するかぶせ物は
噛み締めて歪んだ状態を取り込んで
バーチャル上でかぶせ物を製作するために
人の口の中に入れても、
しっかり噛んだ時にちょうど良い高さのものが出来てきます。

わずか数年前まで
使い物にならんと言われていたものが
主流になりつつあり

ほんとに時代の進歩は
想像を超えてきます。







 
2025年05月13日 16:29

引出し

治療時に
麻酔が効きにくいときは

術者側の麻酔の手技が適切でないか
患者さんが効きにくい遺伝形質をもっているか
その歯が麻酔が効きにくいほどの
炎症を起こしてしまっているか

などの理由があり(他にもあり)

それを解決していかなければ
つらくない治療は
実現できないと思われます。

術者は
その解決方法をいくつも
タンスの「引出し」のように
持っている必要があり

歯科に限らず
「引出し」の少ない医療従事者ほど
「痛くないですか」「大丈夫ですか」
といった言葉を
患者さんに問いかけなかったり
見て見ぬふりをする
傾向があるように思います。

上手くいかない時に
患者さんの指摘を受けることで
引出しの少ない自分を直視することになり
プライドが傷つくからでしょうか

医療従事者の
薄っぺらなプライド、
ほんとうにくだらないと思います
(過激な表現ですみません)


そういう
薄っぺらなプライドにこだわる
医療従事者の感情的な行動が
いかに医療の質を落とし
患者に迷惑をかけるか

診療室では
患者さんこそが
主人公であり

医療人の薄っぺらなプライドなど
どうでもいいことです

医療の質を落とす問題を見逃さないこと
患者さんに不快な思いをさせないこと

この点へのこだわりから
私はスタッフにとっても
やたら細かくてうるさい院長かもしれません

それぞれの院長はそれぞれ
こだわる点が違うと思うのですが

当院はそうありたいと思っています。







 

2025年05月13日 05:26