~かけがえのない歯を大切にする治療、価値ある治療結果、そしてつらくない治療をめざしています~

HOMEブログページ ≫ 「治療の対価」 ≫

「治療の対価」

昔から当院にいらしていただいていた、ある高齢の女性が

いわゆる高級な老人ホームに入られました。

足腰は弱ってらっしゃるのですが、
頭はとてもクリアです。

その方が先日、
ホームのスタッフの方といらして
今使っている入れ歯を
新しく、つるっとしたものにしたい、とのこと。

今使ってらっしゃる入れ歯も
私が以前に保険外で作ったもので
よく安定していて、噛むのにも問題ないが、
つるっとしたものに作り直したいとのことでした。

特に問題は見られないので
どうしたものか、話をよく聞いたところ、
入れ歯の金属とプラスチックの境や
金属の凹凸が気になるとのこと。

ご高齢になると
唾液が減少してきたりして
それまで気にならなかった凹凸が
気になってくることがあります。
舌が擦れるとのことでした。

そうなると
入れ歯の設計、材質から
変更する必要があります。

今のような
保険外の材質を使って
つるっとしていて薄くて快適な入れ歯を作り直すとしたら
だいたい70万円くらいの費用になると伝えましたら、
それならやりたいとのこと。

この場所で長く開業していると
思うことがあります。

ご高齢になってからも
経済的に余裕のある暮らしをしていらっしゃる方々は
最近では羨ましがられることが多いですが、

ではそういう方々が
楽してその境地に達したかというと

とんでもないのです。

今そういう状況にある方々は
そこに至るまでに
大変な思いをしてきていて

時には体を壊したり
時には修羅場をくぐり
時にはどん底を経験し、そこから大逆転したり
並大抵でない過去を通して
今がある
そんな人達ばかりです。

そして成功することだって大変ですが
成功した後に真っ当に生きる、
家族を真っ当に生かすことだって
大変なわけで

そうやって今がある
そういう人が
人生の最後の時間を快適な入れ歯ですごしたいと

わかりました。
そうしたら、つるっとした、快適な入れ歯を
作りましょうと、

私は今の入れ歯のコピーを作って
作業を始めていました。

するとしばらくして
電話がかかってきました。

患者さんからでした。
金額などの説明をもう一回聞きたいとのことで
説明したところ、
では宜しくお願いしますとのこと、そのあと

ちょっとお待ちください、ここ(施設)の人に変わります、と

次に施設の若い男性の担当者が電話口に出て
自己紹介の後、
こう言いました。

検討してまた連絡します。
金額が金額ですから。

驚きました。
第三者が勝手に電話を聞いているとは思わなかったからです。

そして思いました。

金額が金額ですから…?

その発言は、誰の価値観だと。


その後、患者さんから電話がかかってきて
治療をやめることにしたそうです。
我慢することにした、と言ってました。
説得されたようです。

なんのための我慢でしょう。
人生の最後の貴重な時間の
その我慢は
なにか、報われるのでしょうか



 

2019年11月21日 18:46

モバイルサイト

医療法人 入江歯科医院スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

院長の私的ブログ 日々雑感
ブログ一覧