~かけがえのない歯を大切にする治療、価値ある治療結果、そしてつらくない治療をめざしています~

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日々雑感

消えた「心因性」

医学的には痛みには3種類あります。

熱いものに触れたり、ぶつけたりした時に感じる
侵害受容性疼痛、と

末端から中枢に至るまでの途中の神経線維に障害が
生じておこる、神経障害性疼痛

そして中枢で問題が生じておこる、
痛覚変調性疼痛

の、3つです。

虫歯の痛みは一般的には歯髄の中の受容器で感じる
ことが多いので、侵害受容性疼痛

(例外あり)

ヘルニアで坐骨神経痛とか、
三叉神経痛、
帯状疱疹後神経痛などは
痛んでいる場所自体に問題はなく、
そこに至るまでの神経に問題が生じているので
神経障害性疼痛

そして脳など中枢での変化により
痛みの感受性が高まっておこるのが
痛覚変調性疼痛

PTSDやうつ、その他さまざまな経験や状況により
脳内の電気信号に変調をきたし
痛みを感じたり、強く感じてしまう

以前はこの痛みを
心因性疼痛、などと表現されていました。

ただこの表現だと
心の問題、精神的な問題といった
非科学的なとらえ方がなされるため
今は使われません。

心因性の疼痛、とは
今は言わないのです。

どう見ても異常がなくても
患者さんは痛みを感じていることがある

それは脳内の電気信号に変化が起きてしまっているためで
決して、気のせい、といったものではない

そして我々歯科医が
気を付けなければいけないこととして

よくわからない痛みに対して

安易に歯を削ったり、歯髄を取ったりしては
いけないということです。

歯が原因でない歯の痛みを
非歯原性歯痛といいます。

実は正常な歯髄なのに
非歯原性歯痛を歯髄の炎症と
勘違いして
歯髄を取ってしまうという事例が
存在します。

当院ではできるだけ
歯髄を取らないようにしています。

なぜなら歯髄を取れば
歯の寿命が短くなることが多いからです。

特に痛みの原因がよくわからないときは
決して神経を取ったりしません。

たとえ歯の痛みの訴えであっても
実は筋筋膜疼痛など非歯原性歯痛で
歯髄を取らなくても、
理学療法で治ることもあり

それが少しでも疑われれば
歯髄は取りません。

そのような場合、何で歯の治療をしてくれないのか、と
言われることもありますが

歯の治療をしても治らない痛みで
別の原因の可能性があるからです。

また万一にも間違えて取ってしまった歯髄は
決してもとには戻らないからです。





 

2025年01月31日 22:02

とんでけー

昨晩は
もう90近い
認知症の母が
足の神経痛がひどく痛く
苦しいらしく

寝てもすぐ痛みで目が覚めてしまうようで
誰かいないか、というので

そばで面倒をみていました。

1時と3時、4時を過ぎ
あまりの痛みに
足を切り落としてしまいたいほど、とのこと

こんな人生の最後まで人を苦しめる
痛みとは

いったい何なのか

4時半くらいに
つかの間の眠りについた母を見て

私が小さいころ
虫歯が痛くて
朝方まで母のひざ枕で
泣いたことを思い出しました。

「いたいのいたいの

とんでけー」

今の私より
ずっと年若かった母は
どういう気持ちだったんだろうと
思いました。

2023年09月07日 04:16

歯が原因でない痛み

患者さんが歯が痛いと訴えて来院された場合でも
原因は歯の場合と、歯でない場合があります。

歯の痛みのように感じる
歯が原因でない痛みを
「非歯原性歯痛」
といいます。

患者さんはまるで歯が痛いように感じるので
「歯を治してほしい」と来院されるのですが
注意が必要です。

残念ながら
非歯原性歯痛にたいして
歯の治療をしてしまう事例が
報告されています。

たとえば
悪くない歯を削ってしまったり
神経を取ったり
抜歯になってさえも
痛みが取れない事例

この非歯原性歯痛は
臨床で比較的高頻度に見られます。

原因は
筋肉の痛みだったり
神経線維の傷だったり
痛覚の変調とか
三叉神経痛
上顎洞炎
脳腫瘍などのこともあります。

患者さんは抜けば治るのではないかと
抜歯を希望され
抜歯をしたのに
痛みが取れない、
ということが起こりうるのです。

そのため私たち歯科医は
「これは非歯原性歯痛では」
と思ったときに
安易に削ったり、ましてや抜いたり
しないようにしなければいけません。
しても治らないのですから

痛みに耐えている患者さんには
時間がかかってしまって大変申し訳ないのですが
遠回りになるようでも
ちゃんと評価して
非歯原性歯痛の原因に対する
治療を行うことで
歯を守る必要があります。
 
2022年12月19日 06:32

医者の「ちょっと」

自分が昔
口腔外科にいたころ

残念なことに
この処置は痛くて当たりまえ
みたいな考えがありました。

顎骨骨折のシーネ巻とか
手術後の抜糸、とか

口腔外科でなくてもあります。
下の奥歯の急性歯髄炎の治療とか

患者さんの立場からして
心配なのは
自分がこれから受ける処置は
どうなのか、ということだと思います。

これは歯科に限らず
何科でもあることだと思うのですが

というか、
医科のほうが多いかもしれません。

以前内科の先生に
「ちょっとしみる可能性がある」と言ったら

「医者の言う”ちょっと痛い”は
ちょっとじゃないことが多いので、
麻酔してください」とのことでした。

かつては伝統的に
痛いのはしょうがない、
みたいな認識があったわけですが

今思うと
バタバタと忙しい
大学病院の診療室だから
できなかっただけで

例えば抜糸とか
肉眼でやろうとするから
引っ張らなければいけないのであって

マイクロスコープを使って
0.3mmの糸を
10倍に拡大して切れば

ほとんど引っ張らなくてもいいし
痛くなくできます。
(状況にもよるかもしれませんが)

急性歯髄炎の治療にも
様々な工夫があります。

高杉晋作氏の言葉で
「おもしろきこともなき世を
おもしろく」

というのがあるようですが、

当院では
様々な工夫で

「痛い治療も
痛くなく」

でありたいと思っています。
2022年06月14日 10:33

麻酔が効きにくいとき

歯科では麻酔を多用しますが
まれに効きにくい方がいらっしゃいます。

「それは麻酔が下手なんだよ」と
言いたい関係者もいらっしゃるかもしれませんが

歯科でよく使う
局所麻酔薬、リドカインは
遺伝子レベルで効きにくい人がいると
言われています。

それから
例えば下顎の奥歯の病状が余りに悪くなってしまって
やむを得ず、複数歯の抜歯や、
手術をしなければならない場合、

下顎孔伝達麻酔という方法があって
これがうまくいくと
術中の鎮痛が
まったく違うものになります。

ただしこれも通常リドカインですし

ちょっと専門的ですが
靱帯が神経の入り口を取り巻いている
解剖学的形態の方もいて

そういう方で効かせるためには
かなりのピンポイントで
注入をする必要があります。

つまりそういう方の場合、
麻酔の成功率が低くなるのです。


では治療しようとして
麻酔が効きにくい時にはどうするか

「ちょっと頑張ってください」と言って
やってしまうか…
それはしません。
やりたくもありません。

どれほど我慢なさっているかわからない状況で
治療を進めるのは
危険だと思います。

ではどうするか

麻酔効果不良時に
リカバリーする方法が
いくつかあります。

患者さんに相談の上で
その方法で麻酔を追加します。

それでも効かなかったらどうするか

相談のうえで
もしよろしければ
もう一回追加します。

それだけやれば
まずリカバリーできるのですが

残念ながら
非常にまれですが
効きが悪い場合があります。

その場合はどうするか

治療を中止します。

歯科の治療の途中であっても
そこまでで
鎮静消毒剤を入れて
ふたをしたり、など対応することで

次回治療時にはより効きやすい
状態にすることができます。


歯科治療は
命のかかった手術や
救命救急処置ではありませんので
無理をすべきではありません。

歯科恐怖になったり
歯科医への信頼を失ってまで
無理くり治療すべきではないと考えます。











 
2022年05月05日 15:29

痛みについて

久しぶりに痛みの話です

歯科では一般的に
歯や歯肉の治療を行います。

そして治療時の痛みをなくすために
麻酔を行うわけですが

どこの歯か
どこの歯肉か、によって

麻酔の効き方が違います。

さらに
歯や歯肉に炎症があるかどうか、でも
麻酔の効き方が違ってきます。

どんな場所でも
どんな状況でも
麻酔をちゃんと効かせて
痛くないように治療を完遂できるか

もちろん
麻酔そのものも痛くなくです。

これらは
歯科医の腕次第です。

さらに言えば
過去の治療で痛い思いをしたかどうか、
によっても
麻酔の効き方は違ってきます。

つまり
患者様の過去の歯科治療の状況や
歯科に限らず
医療のホスピタリティーへの
不信感のレベルに応じて

こちらがスタンスを変える必要があります。

過去の経験から
なかなか本格的な治療に踏み切れず

近づいたと思ったらまた離れて、を
繰り返す場合もあります。

それはそれでいいと思っています。
もちろん、毎回、治療の必要性をお伝えはします。

修復のプロセスには時間がかかる、
これはやむを得ないことです。

私は私の医院で
患者様に大変な思いをしてほしくない
と思っています。

もちろんその後の人生のために
治療をきちんとやる、そのために
時間や手間がかかるのはしょうがない

ただ大変な思いは
してほしくないです。

はじめから最後までつらくないように
ベストを尽くしますが

患者様により感受性や
体の反応も違ったりしますので

もし治療が少しでも痛むようなことがあれば
何とかしますので
遠慮しないで言ってほしいと思います。

具体的であると助かります。
「今触ったところだけ、ピリッとしました」
とか
「何となくしみてきました」
とか

我慢しすぎて
歯科への信頼を失うことだけは
避けたいと思っています。










 
2021年05月03日 01:04

関連痛、という痛み

まれに
一般的なレントゲンなどの歯科の検査では
原因を発見できない「歯の痛み」に
悩んでいらっしゃる患者様がいます。

どんなに虫歯の治療をしても治らず
歯の神経を取っても治らず
結局抜歯をしても
治らなかった、という
経験をされている方も
いらっしゃることがあります。

そのような場合、
いくつか原因が考えられますが

最も多いものは
筋・筋膜疼痛という
筋肉に原因のある痛みの
「関連痛」です。

肩こりとかマッサージすると
筋肉にコリコリと塊を感じるかと思いますが

それがトリガーポイント、というもので
それをぎゅーっと刺激すると

なんと離れたところに痛みを感じます。

10年以上前から上の犬歯あたりの痛みに悩んでいて
大学病院で根の治療なども受けていて
それでも治らないという方がいました。

その原因はなんと
肩の筋肉(僧帽筋)の
筋・筋膜痛
つまり肩こりでした。

肩のグリグリをぎゅーっと押すと
上の犬歯あたりが
イタタタ、となります。

その方の治療は
肩のグリグリのマッサージとストレッチ
以上で終了です。

原因不明の痛みがある場合

だいたいあれだろうと見立てをして
しかるべきところに紹介します。

紹介するのは
「口腔顔面痛外来」です。

口腔外科でも顎関節症外来でも
根管治療専門医院でもありません
(得意な先生がいれば別ですが)

この分野は日々進歩しています。

昔から治らない痛みは
今なら治せるかもしれません。

 
2020年03月29日 19:51