「ご高齢の方の治療計画について」
ご高齢の患者さんの治療方針には大きく分けて二つの考え方があります。
歯に多少の不自由があっても、
程々に、最小限の治療で済ますか
回数や費用がかかってもきちっと
良い形に治しておくか
もちろん相談して決めることですが
私は基本
積極的に生活の質を高めるような
「きちっと治す」治療方針を
お薦めすることが多いです。
最近のご高齢の方は元気な方も多いですし、
80代でもきれいに歯をケアしていて
元気で充実した生活をなさっている方なら
残った歯の状況にもよりますが
費用は安いけれども
残った歯に負担がかかる、あまり咬めない入れ歯よりも
費用がかかっても残った歯に負担の少ない
よく咬める入れ歯を薦めていますし、
義歯でなくインプラントを薦める事もあります。
高齢者にインプラントを薦める事については
賛否があります。
私も昔は否定派でした。
極端な話、総入れ歯の方が
介護が必要になったとき
楽じゃないかと。
私はお隣の日赤の老人ホームにも
休診日に診療に行ったりしていますが、
総入れ歯の方は介護が楽、
確かにそうです。
一方でインプラントの人も時々いらっしゃいます。
この人の体力はインプラントが支えているな、と
思うような方もおられる
どちらがいいかは
難しい問題です。
時々診療室で
とてもお元気なご高齢の方が
こんな風におっしゃることがあります。
「まあ、あと数年だから、
ほどほどで」と…
しかし元気で
充実した生活を送っている
健康な高齢者が
「寝たきりに向けて」
消極的な治療方針を選択する事には
私は疑問を感じます。
私が開業している地域では
平均寿命よりずっと長く元気で居られる方が多いように
感じます。
しかし、本当にあと数年ということも
あるかもしれません。
それはわかりません。
たとえもし、そうであったとしても、
その人の、その最後の「数年間」は
二度とないのです。
寝たきりの終末にむかう準備として
その数年を費やすか
その数年の生活の質を
出来るだけ高めようとするか
その方の生活環境にもよるでしょう。
その医院の環境にもよるかもしれないです。
でもこの地で開業して来た自分としては
可能であるならば後者の、
あと数年の生活の質を
出来るだけ
高める方を選択してもらいたい、と
思っています。